十九歳のジェイコブ

昨日、新国立劇場で「十九歳のジェイコブ」を観てきました。原作:中上健次、脚本:松井周、演出:松本雄吉。

 

テレビや、映画など、エンターテイメントはどこにいてもそれなりに楽しめる、観るものですが、昨日の「ジェイコブ」は、劇場のその場に「居る」ことで受け止めることができる、重い作品のように感じました。虚しさや、焦りや、残酷さの中に、私の世代には何とも説明できない懐かしさや、若い人たちが傷つきやすいことに対して、それを観ている苦しい感じ。ユキという登場人物は痛々しく、繊細でした。象徴的な表現も多く、難解であったり、納得のいかないところもありました。でも、目先の日常とは違うことを、突き詰めて考える、追求することなく、なんとなく流される時間に杭を打つような時間を与えてくれる作品でした。

劇中、象徴的な音楽は、コルトレーン、アイラ―という中上健次が好きだったジャズとヘンデル。音楽もその場で生演奏されていれば、より贅沢な観劇だったでしょうが、この場合は、ジャズ喫茶で流れている音楽と、ユキという青年が聴いていた、もともとスピーカーから聴こえる曲です。ヘンデルが暗く聴こえました。

恥ずかしいことですけれど、中上健次の作品を読んだことがなく、原作を知らないで、先入観も何もなく圧倒されてきました。46歳で亡くなった作家の作品を読んでみようと思います。